大判例

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千葉地方裁判所 平成4年(行ウ)3号 判決

原告

ホテル計画株式会社

右代表者代表取締役

飯塚和夫

右訴訟代理人弁護士

鰍澤健三

伊東眞

右訴訟復代理人弁護士

根木純子

被告

千葉県建築主事 石〓敏孝

右訴訟代理人弁護士

古屋紘昭

右指定代理人

土岐沢勇造

小沢延好

石橋賢二

五木田光右

事実及び理由

第三 検討・判断

一  争点1(排水上の有効な連結の有無)について

1  前記争いがない事実及び〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(1)  本件確認申請(平成三年五月三〇日提出)では、建築物の排水用配管の末端を既設排水管に接続し、同既設排水管を通じて公共排水設備(小川)につながる計画となっていること。

(2)  右既設排水管は、建築物敷地脇から、公共水路(同敷地沿いの三・五メートル幅の用悪水路)、町道を横断して小川(公共排水路)まで至る長さ約一三九メートル(雑排水枡八か所及び町道内の集水枡経由)のもので主要部分は直径三〇センチメートルの塩化ビニール製丸管(塩ビ管)とみられるものであること。

(3)  当該既設排水管は、町道横断部分の設備(集水枡一基、塩ビ管約四・四メートル)について、道路管理者である千倉町長から原告に対し、不法占用物件として平成三年七月三日までに除去することを命ずる旨の道路法七一条一項に基づく措置命令(平成三年六月一七日付倉建第三七七号)が出され、更に、右公共水路横断部分と右小川(公共排水路)への排水部分の設備(塩ビ管二か所)について、同公共水路管理者代理人である千葉県館山土木事務所長から原告に対し、不法占用物件として撤去を求める通知(平成三年七月五日付)が出されていること。そして、右除却命令等の事実は、本件確認申請に関するものとみられる千倉町長から千葉県知事への意見書等を通じて当時被告(建築主事)も知つていて、これを本件処分(建築確認申請不適合通知)の判断の基礎の一つにしていたと推認されること。

(4)  なお、右町道横断部分の設備(集水枡一基、塩ビ管)については、原告は千倉町長の措置命令の取消を求める訴を当裁判所に提起したが、平成七年までに当該部分の設備を撤去したこと。

2  右事実関係によれば、原告の本件確認申請における排水計画では、町道、公共水路を横断する約一三九メートルの長さの既設排水管を通じて建築物から公共排水施設(小川)へ排水することになつていたが、当該既設排水管は、右のとおり町道横断部分等につき不法占用物件として道路管理者から除却命令(これは原告が争つていても裁判等で取消されるまでは有効なものとして執行されうるものである)を受ける等していて、恒久的な設備とはいえない状況にあつたといえるから、このような不安定な状況にある設備(既設排水管の町道横断部分等)を経由しての排水計画は、建築基準法施行令一二九条の二の二第三項三号にいう「建築物と公共排水施設との有効な連結がある」ことには該当しないと解される。そうすると、本件処分(建築確認申請不適合通知)において、原告の排水計画には、「建築物と公共排水施設との排水上の有効な連結がない」点で建築基準法施行令一二九条の二の二第三項三号に適合しないとした被告(建築主事)の判断は正当なものとして是認することができる。

3  これについて、原告は、建築基準法に基づく建築主事による建築確認処分は、建築確認申請にかかる建築物が同法及びそれに基づく命令・条例所定の建築物としての最低水準を充すか否かを技術的見地から審査するものであつて、建築主事は、右各規定以外の他の法令への適合性や敷地利用権原の有無までを審査する権限・義務を有しないものであるところ、本件処分(建築確認申請不適合通知)は、原告の本件確認申請での排水計画が技術的見地からは有効な排水機能を持つ既設排水管を通じてのものであるのにもかかわらず、被告(建築主事)において、当該既設排水管の一部分(町道・公共水路等)につき原告が公法上・民法上適法な敷地利用権原がないと判断し、この判断に基づき為されたものであつて、これは、建築主事による建築基準法に基づく建築確認申請の審査権原を逸脱するものであつて違法である、と主張する。しかしながら、被告(建築主事)による当該排水計画についての審査は、当該排水計画が建築基準法施行令一二九条の二の二第三項三号にいう「有効な連結」に該当するか否かについてのものであつて、その審査において、既設排水管の町道横断部分につき道路管理者(千倉町長)から、道路法に基づく前記除去命令を受けている等の事情を確認し、当該除去命令は原告が争つていても裁判等で取消となるまではいつでも執行されうる性質のものであるから、社会的事実として、当該既設排水管が恒久的・安定的な排水設備ではないと判断しているに過ぎないものであつて、当該排水設備(既設排水管)につき原告の敷地利用権原を審査して、一部で敷地利用権原がないから右「排水上の有効な連結」がない、と判断しているわけではないことは自ずと明らかである。そして、本件処分(建築確認申請不適合通知)において、原告の本件確認申請での排水計画が建築基準法施行令一二九条の二の二第三項三号にいう「排水上の有効な連結」がないとした被告(建築主事)の審査・判断が是認できることは前記1、2のとおりであるから、この点に関する被告の右主張は採用できない。

二  争点2(本件確認申請後に施行された条例の改正された基準による審査の可否)について

1  〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

(1)  本件確認申請が平成三年五月三〇日提出され、その後の同年七月一日に千葉県建築基準法施行条例の改正条項(同条例五〇条の三第一項一号、二号及び五〇条の四第一項を含むもの)が施行されたこと。

(2)  右条例の改正条項施行においては、改正前の申請については改正前の規定を適用するというような経過措置はなかつたこと。

(3)  本件処分(建築確認申請不適合通知)は、右条例の改正条項施行後である同年九月二日付で右改正後の安全・日照確保に関する基準(同条例五〇条の三第一項一号、二号、五〇条の四第一項)に適合しないことを一つの理由として為されたこと。

2  これについて、原告は、本件確認申請について申請時には施行されていなかつた条例の基準を遡つて適用するのは許されない、と主張する。

しかしながら、行政処分は原則として当該処分当時の法令を適用してなされるべきものと解されており(最高裁判所昭和四三年(行ツ)第一二〇号事件についての昭和五〇年四月三〇日最高裁判所判決参照)、本件確認申請後に施行された右条例の前記改正条項は本件処分時(平成三年九月二日)には既に施行済であり、かつ、改正前の申請には改正前の条項を適用するというような経過規定もないから、本件処分において右条例の当該改正条項の基準によつたことにつき原告の主張するような違法はない。

3  なお、被告が本件確認申請の提出(平成三年五月三〇日)から所定の三週間以内(建築基準法六条三項)に申請に対する処分をしないまま、前記条例の改正条項の施行(同年七月一日)に至り、本件処分(建築確認申請不適合通知)は右申請後三か月余り後となつたのは前記のとおりであるところ、このように時間が経過して右改正条例施行前に改正前の基準による建築確認を原告が得られなかつたのは、主に、本件確認申請の排水計画等につき補正を求められた原告がこれに応じなかつたことによるとみられ(〔証拠略〕)、専ら原告の責に帰すべき事由によると考えられるうえ、右排水計画に関しては右条例の改正条項とは関係のないことでもあるから、本件では、本件処分を右条例の改正条項の施行前にしなかつたこと等処分までに所定の期間以上を要したことによる本件処分の違法を認めることはできない。

4  また、〔証拠略〕によれば、本件確認申請については、前記条例の改正後の安全・日照確保に関する基準(同条例五〇条の三第一項一号、二号、五〇条の四第一項)には適合しない部分が存したものと推認される。

5  そうすると、本件処分につき前記条例の改正条項を遡及適用した違法があるとする原告の前記主張は理由がなく、本件では、本件処分において、本件確認申請が安全・日照確保に関する右改正後の基準に適合しないとした点に何ら違法は見い出せない。

第四 結論

一  以上の検討結果によれば、本件処分(建築確認申請不適合通知)に原告の主張する違法はなく、本件確認申請には、本件処分で理由とする建築基準法施行令一二九条の二の二第三項三号(排水上の有効な連結)、平成三年七月一日改正条項施行にかかる千葉県建築基準法施行条例五〇条の三第一項一号、二号、五〇条の四第一項(安全・日照の確保に関する基準)に各適合しない部分があり、本件処分は正当といえるうえ、本件では、その外に本件処分を違法とするだけの事由は見い出せないから、本件処分は適法というべきである。

二  したがつて、本件処分の違法を主張し、その取消を求める原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用を原告の負担と定め、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千德輝夫 裁判官 大久保正道 三島琢)

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